20代のあの頃、セクシーで美人系のT子は、当然ながら男性によくモテた。

taetae1092009-05-07


職場の複数の男性と、二股どころか三股かそれ以上かもしれない付き合いをしていたようだった。

そんな状況の職場へ社内移動で入ってきたのがN君。

当時私が感じたN君の印象と言えば、

  1. ファッションセンスがイマイチ
  2. 毛深くて近寄りがたい
  3. 話しても気乗りしないタイプ
  4. 飲みに誘われても断りたいタイプ
  5. 特に目立った印象がない

等々、要するに全く眼中に入らないタイプの男だった。

N君が来てから数年がたち、噂の絶えないT子がいよいよ結婚することになった。

T子のお相手は、そのN君だったのだ。これにはぶったまげた。

T子なら、“もっといい男”はたくさんいたはずなのに、

「何故N君なのよ?」

確かあの時T子が答えた内容は、

「何でだか、自分でもよくわからないの」

だったと記憶している。

結婚相手を決めるのに、よくわからないってどういうこと?

T子とN君が付き合っていたとか、N君がT子を好きらしいよといった噂は、

狭い所内では全く聞かなかったけれど、

水面下でN君が地味にアプローチしていたのかもしれない。

男性からのアプローチ慣れしていたはずのT子だが、

N君の場合は、結婚の条件として具体的な提示をしたと思われる。

なぜなら、N君の強みは「僕と結婚したら、親がすぐに新築戸建住宅を建ててくれる」

というビックプレゼントだったのだ。

多分他の男性たちは、これ以上の“結婚の条件”を出すこともなく、

ルックス的には“格下”のN君に、T子を奪われてしまったことになる。

当時、シンデレラガールのように“結婚退職”していったT子を、

他の女性社員たちは憧れる反面、“新築の家に目が眩んだ女”として、

T子をよく思わない人もいたと思う。

私は、T子とN君が結婚してうまくやっていけるのか、全く予想できなかった。

そうこうしているうちに、私も結婚退社してしまい、

それ以来、T子とN君に会う機会もなく、20年の時が流れた。


さて今年に入り、私と当時の同僚だった女性と二人で、

職場の同窓会を企画することになったことを機に、

N君とT子夫妻宅を訪ねることになった。

結婚当初から住んでいるその家で、彼らは幸せに暮らしていた。

相変わらずT子の美貌は健在だったが、

N君はといえば、想像以上に“オヤジ化”しており、

独身の頃に抱いたN君のイメージは、変わらずじまい。

ダンディーとかセクシーというキーワードとは対極のルックスだった。

だが、2年前の厳しいリストラの網をくぐりぬけたN君は、

今も当時の会社で勤続していて、家計は安泰。

元々地味なので女性問題も発生せず、堅実な夫を貫いている。

「結婚するならパパみたいな人が一番よ」

T子が幸せそうに笑った。



ある程度の資産があり、堅実で真面目なN君は、

確かにT子の結婚相手に相応しかったと言えるだろう。


当時の私には、N君が“面白みのない男”にしか映らず、

彼の堅実なところなんて、見たいとも思わなかったけれど、

私の“男を見分ける”能力は、今でも自信がない。(笑)


結婚したいと思う相手がどうしようもなく好きでも、結婚となると話は別になる。

生活力のない男だったりしたら、

女ぐせの悪い男だったら、

ザコンの男だったら、

金遣いの荒い男だったら・・・等々、

好きな男の、表面化していないが将来重大問題につながりそうなリスクは、

恋愛感情から差し引いて結婚を判断すべきだろう。


自分の選んだ相手に対して、ちょっぴり後悔をしている私は、

T子とN君の家庭が、軽く羨ましいと思っただけだ。

他人の家の芝はよく見えるものだよね〜。